相続放棄が受理されないケースとはどういったものか

文責:所長 弁護士 寺井渉

最終更新日:2023年06月22日

1 相続放棄が受理されないケース

 相続放棄の申述をしても、裁判所に受理されない(相続放棄できない)ケースは、以下のような場合が挙げられます。

 ① 書類の不備

 ② 熟慮期間の経過

 ③ 単純承認の成立

2 ①書類の不備

 相続放棄を行う場合、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄の申述書や戸籍等の必要書類を提出する必要があります。

 その後、裁判所によっては、照会書などを申述人に送達し、その回答を待って受理するか否かを決めます。

 そもそも申述書に添付する書類などに不備があった場合、裁判所は受理してくれません。

 ただし、書類の不備については、裁判所が補正してくれることが多いですので、裁判所の指示に従い、早急に補正(書類の補充など)を行えば、書類の不備を理由に受理されないということは回避できます。しかし、補正に時間がかかりすぎると、受理されないこともありますので、早急な対応が必要となります。

3 ②熟慮期間の経過

 ⑴ 原則

 相続放棄が受理されるためには、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に手続きを行う必要があります。

 この期間のことを「熟慮期間」と言います。

 この熟慮期間を経過すると、相続放棄が受理されません。

 ポイントとしては、被相続人が亡くなってから3か月ではありませんので注意してください。「自己のために相続の開始があったことを知った時」から熟慮期間がカウントされます。相続開始を知ったときについて、誤解されていることもありますので、注意してください。

 ⑵ 例外

 熟慮期間が経過した場合であっても、やむを得ない理由がある場合には、相続放棄が受理される場合もあります。

 例えば、被相続人には借金はないと思っていたにもかかわらず、多額の債務が見つかった場合などがあります。

 ただし、受理するか否かは裁判所の判断となりますので、裁判所に受理してもらうだけの主張をすることが重要となります。そのため、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

4 ③単純承認の成立

 相続人が相続財産の全部または一部を処分したときなど、単純承認が成立している場合、相続を認めたこととなりますので、相続放棄をすることができず、受理されません。

 ですので、相続放棄を検討している場合、相続人の財産(遺産)は処分などしないことが必要です。

5 相続放棄が受理されなかった場合どうすれば?

 相続放棄の不受理という家庭裁判所の判断に不服がある場合、高等裁判所宛に、即時抗告の申立を行うことが出来ます。

 この即時抗告の申立は、家庭裁判所の判断から2週間以内に行う必要がありますので、急がなければなりません。期間が経過すると、即時抗告の機会も失われてしまいます。

 この即時抗告の申立を行う際には、抗告状と即時抗告の理由(不服理由)を明らかにする必要がありますので、不受理になる可能性があると思われる場合には、家庭裁判所の判断が出る前から準備しておくことも大切です。

PageTop