相続放棄と相続税申告の関係についてのお役立ち情報

作成者:所長 弁護士 寺井 渉

最終更新日:2023年08月08日

1 相続放棄と相続税申告の期限

 相続放棄は、自己のために相続があったことを知った日から3か月以内にする必要があります。
 他方、相続税申告は、相続開始から10か月以内にする必要があります。
 相続放棄が終わっても、相続税申告が必要な可能性があるので、注意が必要です。

2 相続放棄と基礎控除額

 相続税申告は、相続財産が基礎控除額をこえる場合に行う必要があります。
 基礎控除額は、法定相続人の数で決まります。
 基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で算出します。
 民法上、相続放棄した場合、初めから相続人ではなかったことになります。
 しかし、相続税法上は、基礎控除額を計算する際には、相続放棄がなかったものとして、法定相続人の人数を計算します。
 そのため、相続放棄をした場合でも、基礎控除額は変化せず、相続放棄を理由に相続税の全体額が変わることはありません。

3 死亡保険金の非課税枠と相続放棄

 死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」によって算出される金額を上限として、非課税財産となります。
 そして、相続放棄した相続人がいる場合でも、死亡保険金の非課税枠を計算する際には、相続放棄がなかったものとして考えます。

 参考リンク:国税庁・相続税の課税対象になる死亡保険金
 そのため、相続放棄した場合でも、死亡保険金の非課税枠は変化しません。
 ただし、死亡保険金の非課税枠の適用を受けるためには、民法上の相続人であることが必要です。
 相続放棄した相続人自身は、自分が受け取った保険金について、死亡保険金の非課税枠の適用を受けることができませんので、注意が必要です。

4 相続放棄すれば、死亡保険金を受け取っても相続税は発生しないか?

 既に説明したように、相続人の内の一部が、相続放棄しても、基礎控除額と死亡保険金の非課税枠等は、相続放棄がなかった場合と同じです。
 そのため、死亡保険金の非課税枠等考慮に入れて計算した結果、課税される相続財産が、基礎控除額を下回れば、相続税は発生せず、相続放棄した相続人も相続税を納める必要はありません。
 反対に、課税される相続財産が基礎控除額を上回れば、相続税は発生します。
 死亡保険金を受け取った相続人は、相続放棄したことによって、死亡保険金の非課税枠の適用を受けることができないことを前提に、算出された相続税を納める必要があります。

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